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「知的財産政策に関する意見」について

 

 日本商工会議所(三村明夫会頭)は3月20日開催の第684回常議員会・第273回議員総会(東京商工会議所(三村明夫会頭)は、3月14日開催の第214回議員総会・第715回常議員会で決議)にて、知的財産専門委員会(委員長:荒井寿光・東京中小企業投資育成㈱ 相談役)がとりまとめた標記意見を決議しました。

 本意見は、知的財産政策について、目指すべき方向性と望まれる施策をまとめたものです。今後、政府の知的財産戦略本部や特許庁をはじめとする関係先に対し、要望事項の実現を働きかけていきます。

 

○基本的な考え方

①わが国には、従来より、大企業にはない優れた技術を持つ中小企業が多く存在し、日本の経済成長と国際競争力の源となってきた。中小企業は様々なビジネス形態の中で、自らの成長とともに、日本経済全体の発展に貢献し、わが国の大きな強みとなっている

 

②こうした中小企業にとって知的財産(知財)は、イノベーションの創出やブランドの確立に貢献し、新たな需要を掘り起こすための競争力の源泉であると同時に、次の研究開発投資に向けた収益を生み出すための貴重な経営資源でもある

 

③しかしながら、現実には、世界全体の特許出願件数が高い伸び率を示している中、わが国における特許出願件数は漸減傾向にある。また、中小企業等の特許出願件数や研究開発費等においても、わが国は米国や中国に大きく水をあけられている状況である

 

④わが国が直面する課題は中小企業に最も顕著に現れ、その課題解決こそがわが国全体の技術力や競争力の底上げにつながるため、これまでの制度設計を見直す必要がある。したがって、中小企業に一段と焦点を当てた新たな制度設計について、早急に検討を行うことが必要。その一例として、中小企業が今後も知財を活用し、活発なイノベーションにより優れた技術を生み出せるように、知財の価値を適切に評価するための仕組みの再構築が必要。また、地方創生を加速させるためには、地域中小企業の競争力を強化することが最も効果的。中小企業がコンテンツを含め知財を経営に活用し、自らの競争力を高めていく意識を醸成することも重要である

 

○主な要望事項

Ⅰ. 知財紛争処理システムの改革を

 

1.悪質な侵害行為の抑止・損害賠償額の適切な水準への引き上げを

損害賠償額が「通常の特許実施料相当額」を上回るように法定すること

②諸外国を参考に、侵害者の手元に利益が残らないようにするなど、悪質な侵害を防止するための制度等について検討し対応すること

 

2.証拠収集手続の更なる強化を

①中小企業が侵害の証拠を十分に収集できるようにするとともに、見込み違いの提訴を防ぐために、訴訟提起前にも査証を導入すること

②侵害の立証に必要な証拠を侵害者に提出させるために、査証に一定程度の強制力を持たせること

 

 

Ⅱ. 知財金融の活用による知財の事業化の促進を

 

1.様々な評価手法を組み合わせた知財金融の促進を

①経営デザインシートの活用促進など、知財の事業性評価を活用した融資制度の普及を強力に進めること

②知財ビジネス評価書作成支援について、実際に融資件数・額を増加させるという観点でも、金融機関の更なる理解を深めること

  

Ⅲ.中小企業のイノベーションを促進するための支援体制の強化を

 

1.中小企業の出願をより一層加速させること

中小企業の特許料金の一律半減制度について、分かり易く周知啓発する説明会を継続的に開催すること

②審査請求、早期審査等の申請手続きの簡素化を進めること

③かんたん願書作成について、インターネット出願全体としての手続きを抜本的に改め、中小企業が活用しやすくすること

 

Ⅳ.地域中小企業の競争力強化を

 

1.地域の連携による戦略的な知財活用を

国や自治体等の最新の支援策をワンポータルに一括して分かり易く紹介し、中小企業が常に活用できるようにすること

②各地の産学連携の起爆剤とするべく、大学や研究機関の特許を中小企業が事業化評価をする間、無償開放し、事業化後に有償契約に移行する制度を整備すること


2.地域資源を最大限活用し、新たな需要の創出を

①地域団体商標の経済効果を上げる追加的措置、地理的表示の成功事例の横展開を

 

Ⅴ.わが国コンテンツ産業の成長加速を

1.官民連携による海外市場・新市場の開拓を

①新興国等のコンテンツに対する規制の緩和・撤廃に向けた働きかけを強化すること

 

2.正規コンテンツの流通を促進し、適切なコンテンツ創作環境の構築を

①海賊版と知りながら漫画や小説など静止画をダウンロードする行為や、リーチサイトの取締り強化に向け、法制面・技術面など多様な対策を早急に行うこと

②コンテンツ制作現場に適切な利益が還元されるよう取引環境を整備すること

 

意見書の全文は以下リンク先をご覧ください。

知的財産政策に関する意見(概要)(PDF

知的財産政策に関する意見(本文)(PDF

 

以上

 

【本件担当・問い合わせ先】

 日本商工会議所

 産業政策第一部

 担当 佐藤、寺田、清水 

TEL 03-3283-7630