こちらは2024年3月31日までの過去ニュースがご覧いただける日本商工会議所の旧サイトです。 新サイトはこちら

【最新!海外事情レポート】ベトナムでも存在感が高まるインド(ホーチミン)

昨年12月、国際協力銀行(JBIC)が実施した「わが国製造業企業の海外事業展開の動向に関するアンケート調査」の調査結果が公表され、中期的な有望事業展開先としてインドが首位、ベトナムが2位となった。日本では特にビジネス分野でインドへの関心が高まっているが、ベトナムにおいてもインドの存在感が高まりを見せている。本稿では、そのような当地における現在の状況を紹介したい。

 

 

1.外交面からみた越印関係

 ベトナムとインドは、19721月に外交関係を樹立した。その後両国の関係は、2007年に「戦略的パートナーシップ」、2016年には最上位の「包括的戦略的パートナーシップ」へと格上げされた。ベトナムが包括的戦略的パートナーシップを締結する国は、長らく中国(2008年)、ロシア(2012年)とインドの3か国のみだったが、直近では新たに韓国(2022年)、米国(2023年)、そして日本(2023年)が加わった。この点から、ベトナムは外交面で日本以上にインドとの関係を重視する姿勢が窺える。

 

2.貿易・経済面からみた越印関係

 昨年、ベトナムからインドへの輸出額は前年比6.8%増の8,499百万USDとなり、インドは国別で第7位の輸出相手国となった。世界的な景気減速等の影響により、ベトナムの輸出入は全体として前年を下回る水準となる中、インドは前年比でプラスに転じた数少ない相手国となった。

 また、<図表1>の通り、インドからベトナムへの投資は累計約11USD(日本の約66分の1)であるが、昨年12月、インドの財閥「アダニ・グループ」会長がベトナムPham Minh Chinh首相と面会し、今後10年間でベトナムに総額100USドルの投資を行う可能性を表明した。主な投資分野は港湾・物流、再生可能エネルギー、空港、電力等とされている[i]

 

<図表1:2023年末時点のベトナムへの外国直接投資(FDI)件数・累計登録資本金>

図表1.png

 

3.観光面からみた越印関係

 直近ではインドからベトナムへのインバウンド観光客が増加している。昨年はインドから392千人が入国し、初めてベトナムへのインバウンドの国別トップ10入りを果たした。(図表2参照)

 先日、筆者がベトナム・ホーチミン市で観光スポットとしても有名なベンタイン市場を訪ねた際、店員が「ナマステ」と声をかけながら大勢のインド人観光客に接客している様子に驚いた。市場では様々な生地が販売され、伝統衣装のアオザイや洋服等に仕立てられるが、最近はインド人観光客にも好まれそうな鮮やかなデザインの生地も多く販売されている。そして、市内のインド料理店は連日多くのインド人観光客で賑わっている。

 

<図表2:ベトナムへの外国人観光客数>

図表2.png(ベトナム統計総局資料を基に筆者作成)

 

 現在、ベトナムとインドを結ぶ航空便は、ベトナムの航空会社(ベトナム航空およびベトジェット)がベトナム2都市とインド5都市を直行便で結んでおり、1週間当たりのフライト数は約50便に及ぶ。

 また、当地の報道によると、インドにおいてもGoogle社の「Year in Search2023(検索で振り返る 1 年)」では、「ベトナム」が年間で最も検索された観光先となり、ベトナムのスポーツ・文化・観光大臣もインド人観光客の更なる増加に向けてビザ免除を提案しているとの報道[ⅱ]もあった。

 

 以上のように、ベトナムにおいてもインドの存在感が徐々に高まりつつある。ベトナムが世界各国から外交・経済面等で注目される中、各国が当地でのプレゼンスを競う状況も予想される。本会議所としても諸外国の動向に留意しながら日本企業が当地で一層注目されるよう活動を行っていきたい。

 

 

(ホーチミン日本商工会議所 事務局長 上田 真也)

 


 


[i] 20231222日「thanhnien」記事

 https://thanhnien.vn/ti-phu-giau-thu-hai-an-do-muon-dau-tu-10-ti-usd-vao-viet-nam-185231222202718249.htm

[ⅱ] 20231221日「Toi Tre新聞」記事