【最新!海外事情レポート】オーストラリアの訪日観光客の動向と日本食への関心について(シドニー)
【オーストラリアの訪日観光客】
観光庁が1月17日に発表した「訪日外国人消費動向調査(速報値)」では、2023年(暦年)にオーストラリアから日本を訪れた観光客数は61万3000人と新型コロナウイルス感染症拡大前の2019年の水準まで回復をしている(資料1)。
昨年は航空便の復便や新規就航の動きも多く、年後半の動きでいえば、全日本空輸(ANA)は、昨年10月から成田-パース便を、コロナの影響で運休していた2020年3月以来、約3年半ぶりに再開をした。さらに、カンタス航空も昨年11月に1日1便だったシドニー―羽田直行便を1日2便に、週4便だったメルボルン直行便、週3便だったブリスベン直行便を1日1便に変更する等、直行便を倍増させた。今年も、カンタス航空の子会社であるジェットスターは、オーストラリア人の根強い日本への旅行ニーズに応える形で、2月2日からブリスベン-大阪路線の運航を開始、4月1日からはシドニー-大阪路線の開設を予定しており、日本を訪れるオーストラリア人の更なる増加が見込まれる。
【日本食が浸透するオーストラリア】
日本は、物価が安くリゾート地のあるインドネシアやタイと並び、オーストラリア人の旅行先としての人気が高い。日本を選ぶ理由としては、自然・景勝地、都市観光、歴史・文化、スキー・スノーボード等のアクティビティなど様々あるが、中でも「日本食」に関心を持っている人が多い。2019年のコロナ前の調査では、観光庁の訪日旅行の意識調査では「旅行前に期待していたこと」「旅行中に実際にしたこと」「次回もしたいこと」の質問に対し、「日本食を食べること」の回答が最も多い。
関心をもつ要因として、筆者が実際に当地で駐在をして感じることは、日本食が身近に存在していることが挙げられる。当地では日本食レストランが多く、日本で展開するレストランチェーンや日本人永住者経営のお店はもちろんのこと、日本食の人気の高さから日本人以外の事業主が経営しているレストランも数多くある。街を歩けば至るところに寿司ロール(巻き寿司)を販売するスタンド業態のテイクアウト専門店(写真1)があり、大型スーパーでもSUSHIコーナーが常設されているほどである(写真2)。こうした存在が日本食に興味を持つきっかけとなり、それが現地で本場の日本料理を食べてみたいというニーズに繋がっている側面もあると考える。
(写真1)寿司ロールのテイクアウト専門店
(写真2)現地大手スーパーのSUSHI販売コーナー
【中小企業のビジネスチャンスについて】
この日本食への関心と旺盛な訪日ニーズは日本国内の中小飲食業にとってもビジネスチャンスとなり得る。日本に滞在中のオーストラリア人一人当たりの旅行支出は先の「訪日外国人消費動向調査」によると34万6百円と、国籍・地域別にみるとスペインからの旅行者に次いで1千円差で2番目に日本国内で消費をしていることになる。そしてそのうちの7万6千円ほどを飲食費として支出しており、旅行中の食事体験も重視していることが分かる(資料2)。(ちなみにアジアからの旅行者の支出は飲食費よりも買い物代が多い傾向にある。)
一方で、外国人観光客が日本でコミュニケーションに困る局面が最も多いのが飲食店で、「料理を選ぶ・注文する際」や「飲食店を見つける時」に苦労をしているといわれる。訪日外国人の足取りが戻っている中、改めてホームページの多言語対応化や一目でわかる写真・イラスト入りメニューの作成などの取り組みが、口コミ等に結び付き、今後も増加が見込まれるオーストラリア人観光客の需要を取り込むことに繋がるだろう。
(シドニー日本商工会議所 事務局長 高田 哲大)