こちらは2024年3月31日までの過去ニュースがご覧いただける日本商工会議所の旧サイトです。 新サイトはこちら

衆議院予算委員会で「パートナーシップ構築宣言」推進に関する質疑応答がありました

 2月16日に開催された第208回国会(通常国会)における衆議院予算委員会の第七分科会(経済産業省所管)で、公明党の河西宏一衆議院議員、および立憲民主党の近藤和也衆議院議員から、大手企業への「パートナーシップ構築宣言」の働きかけに関する質疑があり、萩生田光一経済産業大臣等が答弁しました。

 

【第208回国会(通常国会)衆議院予算委員会第七分科会(経済産業省所管)の議事要旨】

(2022.2.16開催/抜粋)

20220216_shugiin.png

(答弁する萩生田経済産業大臣)

 

<河西宏一衆議院議員(公明党)>

■ 2020年5月から政府が取組んでいる「パートナーシップ構築宣言」と下請Gメンの体制強化について質問です。総理が示した「新しい資本主義」に対しては、様々な声があります。企業や株主の利益よりも人を育む環境、あるいは賃金や協力企業への分配など、ステークホルダーを包括する、人のための資本主義なのだと、個人的には解釈・共感しています。

■ まず「パートナーシップ構築宣言」は、企業規模にかかわらず、発注者の立場で自社の取引方針を宣言する仕組みです。代表者の名前で、サプライチェーン全体の共存共栄と新たな連携、下請振興基準の遵守にかかる重点5項目に取組むことを宣言するものです。

■ 去る2月10日に、萩生田大臣と山際大臣が共同主宰する「第3回未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」が開催されました。ここで報告のあった宣言状況については、今年度の目標2,000社を大幅に上回ったものの、中身については更なる推進が必要だと受け止めています。政府の資料によれば、宣言企業数は現在約6,000社で、このうち資本金3億円以上の大企業は約500社。宣言全体の1割程度との記載でした。また、業種別の宣言割合を見ても、大企業の製造業は5.2%、運輸業は3.1%で、やはり2次・3次の下請構造の深い業種で低い水準に留まっています。

■ 加えて、中小企業が99.7%を占めるわが国において、全体の宣言数に占める大企業の割合ではなく、全国の大企業1.2万社に対する500社、つまり4%程度との計算が良いと思います。ここが課題なのではないかと思います。大企業の宣言割合が上がっていかなければ、実効性は伴わないだろうと考えます。まず、現在の宣言状況に関する課題や認識について、特に大企業の宣言割合を上げていくにあたり目標などあるか、萩生田大臣にご所見を伺います。

 

<萩生田経済産業大臣>

■ 「パートナーシップ構築宣言」は、現時点で6,000社を超える企業が宣言しており、今年度中に2,000社との目標は既に達成しているものの、資本金3億円超の大企業は、宣言数全体の1割程度に留まっています。

■ 宣言内容を実現するには、下請企業の多い大企業に宣言を促すことが重要です。こうした問題意識のもと、私自身が経団連・十倉会長に対して「経団連企業には漏れなく宣言を行っていただく」ようお願いしたところです。先週10日に開催した「第3回未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」で経団連・十倉会長からは、昨年11月から宣言企業数が2割増えており、今後も100社程度が宣言予定であると聞きました。今後も一層、周知・徹底を図っていくとも報告いただきました。他方で、まだ宣言に至っていない大企業も相当数あることから、引き続き、宣言企業が増えていくことを期待したいと思います。

■ 政府としては、引き続き、各業界に対する「パートナーシップ構築宣言」の働きかけを強化していくとともに、「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」において、宣言を位置づけるほか、補助金における加点措置の拡大によるインセンティブ拡充などを通じて、大企業の宣言数拡大を図ってまいりたいと思います。

 

<河西宏一衆議院議員(公明党)>

■ 「パートナーシップ構築宣言」とともに「下請いじめ」についても、中小企業政策の看板として、更なる加速が大事だと思っています。岸田総理のもとで、「下請Gメン」を倍増させる方針が示されました。党としても強く後押ししてきた政策であり、評価しています。

■ 今後、更に商工会・商工会議所、また「下請けかけこみ寺」等との連携強化など、ぜひ実効性ある強い政策で、加速度的に推進していただきたいと思います。現下のコロナ渦で傷んでいる中小企業・小規模事業者を後押しするのは、やはり下請企業を守る、弱者を守っていくという政府・経済産業省の強いメッセージだと思います。

 


 

<近藤和也衆議院議員(立憲民主党)>

■ 「原材料価格の上昇すら製品価格に転嫁できない」という声が、あちこちから聞こえています。その中で、前政権から引き継いで、経済産業省では「価格交渉促進月間」を実施して調査も行い、「パートナーシップ構築宣言」を推進しています。昨年11月には、「下請取引の適正化について」の要請書が、経済産業大臣と公正取引委員会委員長名で発出されています。受注側企業と発注側企業との価格交渉において、受注側企業への不当なシワ寄せが生じないようにとの趣旨です。「パートナーシップ構築宣言」について、目標2,000社に対して6,000社が宣言しましたが、今後の数値目標について、どのように考えているのかお伺いします。

 

<中小企業庁>

■ 「パートナーシップ構築宣言」の今後の目標については、宣言企業数の増加ということではなく、特に「大企業の宣言数を増加させていくこと」や「宣言した内容の実効性向上」が課題だと認識しています。大企業における更なる宣言数の増加に向けて、先週「第3回未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」を開催し、その場で萩生田大臣から、経団連はじめ経済団体に改めて周知を依頼したところです。今後とも、政府から業界団体への依頼や、経済団体から傘下企業への一層の周知・徹底を含めて、官民挙げて産業界への働きかけを実施していきたいと思います。実効性の向上については、宣言した内容の実施状況を確認するため、宣言企業全社に対する取組みの書面調査を実施しているところです。年度内に結果を取りまとめて公表し、宣言内容が調達現場まで浸透され、実行されることを促していきます。

 

<近藤和也衆議院議員(立憲民主党)>

■ 現状では、大企業1割に対し中小企業9割の「パートナーシップ構築宣言」ですが、ボリューム的にはまだまだだと思います。大企業・発注者側を増やしていかなければいけません。もう少し踏み込んで、どうやって増やしていくかという問題意識と具体的な方策をお伺いします。

 

<中小企業庁>

■ 大企業も中小企業も含めて、なかなか宣言を強制するわけにはいきません。やはり大企業にしっかり実行していただくことが大事だと思います。先週の「第3回未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」や、経団連と経産大臣との懇談会などの場で、漏れなく大企業の皆様に宣言をお願いしたいと要請等を行っています。引き続き、経団連への依頼、経済団体から傘下企業への周知・徹底も含めて、産業界への働きかけを実施していきたいと思います。

 

<近藤和也衆議院議員(立憲民主党)>

■ 宣言している企業の少ない業種には、ちゃんと声が掛かっているのかという感想を持っています。実際、経産省として、どのように受け止めていますか。

 

<中小企業庁>

■ 現在、約6,000社が宣言していますが、業種別にみると、製造業の割合が最も高く34%です。やはり製造業では、モノづくりの一部を下請取引に出し、サプライチェーン全体で取組みや連携していることが多くあります。このため、宣言の趣旨が、より理解されやすいのではないかと思います。

■ 他方で、例えば情報通信業や小売・卸売業は7%~5%程度で、業種別の比率が少ないのは事実です。これらの業種では、サプライチェーン構造にはないということもあるかと思いますが、やはり取引先から製品やサービスを調達したり、業種を超えた連携を実施しているところもみられます。今後、こうした業種を含めて、多様な業種において漏れなく宣言いただきたいと考えています。引き続き、周知依頼を進めてまいります。

 

<近藤和也衆議院議員(立憲民主党)>

■ 「価格交渉促進月間」のフォローアップ調査が、先日出ました。この調査結果から見えてきた課題や、その課題に対する具体的対策について、ご所見をお願いします。

 

<萩生田経済産業大臣>

■ 経済産業省では、労務費や原材料費などの上昇分が下請価格に適切に転嫁されるよう、毎年9月を「価格交渉促進月間」と位置づけ、大企業と下請中小企業の価格交渉を促進しています。月間終了時に実施したフォローアップ調査では、「価格転嫁の協議」については1割程度の下請企業で全く実施できておらず、また「価格転嫁」については2割程度の下請企業で実施できていない、といった課題が明らかになりました。こうした課題に対応するため、9月に続き、3月も「価格交渉促進月間」と位置付けることで、価格交渉の浸透と定着を図ってまいりたいと思います。

■ そのうえで、翌月以降に2,000社への下請Gメンによる企業ヒアリングや、4万社を上回る下請中小企業へのフォローアップ調査を実施し、今後、業種別の対応状況などを取りまとめ、公表したいと思います。また下請中小企業振興法に基づき、個別企業に対する「助言」による注意喚起も実施します。

■ 加えて、サプライチェーン全体の共存共栄を目指す「パートナーシップ構築宣言」について、更に多くの大企業が宣言するよう参加を促すとともに、宣言企業の下請取引の状況について調査するなど、実効性向上に向けたフォローアップにも取組みます。こうした取組みを通じて、より一層、価格交渉を円滑にするとともに、適切な利益が下請企業に残るような取引環境の整備を進めてまいりたいと思います。

 

<近藤和也衆議院議員(立憲民主党)>

■ 私も本調査を拝見し、約2割が価格転嫁できておらず、また1~3割程度しか転嫁できていない下請企業も2割あり、4~6割程度しか転嫁できてないといった下請企業を含めると半分以上が「なかなか応じてくれていない」「まだまだ厳しい」という結果でした。継続は力なりですので、しっかりフォローアップを続けていただきたいと思います。

■ 「パートナーシップ構築宣言」をしている中で、私が知っている会社はあるかと調べたところ、ほとんどありませんでした。私も色んな企業を知っているつもりですが、何故なのかと思い、商工会や商工会議所の関係者に聞きましたところ「宣言を知らないからだ」と言われました。確かに、宣言そのものは、発注者側である大企業がしっかりやらなければならない点がスタートだと思いますが、やはり受注者側の中小企業も「国がこういうことをやっているから、しっかりやっていきましょう」と、双方向での周知が大変重要ではないかと思いました。商工会や商工会議所だけでなく、他省庁にまたがるような、例えばお米なら農林水産省、お酒なら財務省など、経産省が所管する団体だけでなく、他省庁との横断的な周知というのも必要だと思います。如何でしょうか。

 

<中小企業庁>

■ ご指摘どおりだと思います。経産省所管の業種に限らず、他省庁所管の、例えば金融・保険業や物流業など農水等も含めて、幅広い業種に対して、これまで関係省庁・関係団体を通じて約200団体に周知を行ってきたところです。

■ 商工会、商工会議所についても、全国組織を通じた周知を行っています。ただ、指摘のとおり、まだまだ認知されていない部分も多数あろうかと思います。こうした現状をしっかり受け止め、機会を捉えて、今回の「価格交渉促進月間」を3月にも実施しますので、そういった機会も活用しながら、周知を継続してまいりたいと思います。

 

<近藤和也衆議院議員(立憲民主党)>

■ 1社だけ知っている宣言企業があって、どうして宣言したのか、どういう経路で知ったのか伺いましたら、経営や道徳感、倫理感を学ぶ団体に経営者が所属していて、そこでそういう話しになって、入ろうとなったそうです。公に近いようなところや、どなたか広めていただけるような方がいれば、より拡まっていくのではないかと思います。経営者に近い「地方自治体」にも存在意義を知っていただくことが大事ではないかと思います。現場に近い地方自治体にとっても、「パートナーシップ構築宣言」を守っていくことで、下請企業の多い地場産業を守っていくことに繋がるのではないかと思います。「地方自治体」に協力を求めるべきだと思いますが、如何でしょうか。

 

<中小企業庁>

■ やはり地方自治体は、地元で幅広いネットワークを有しており、企業にとって身近な存在であり、より一層連携を深めていくということを重視したいと思います。今後の話しになりますが、積極的に各自治体の中小企業担当部局に対する周知依頼、あるいは地方自治体に近い地方経済産業局がありますので、局を通じた周知依頼など、あらゆる機会を活用して、全国の地方自治体とも密接に連携しながら周知活動を行っていきたいと思います。

 

<近藤和也衆議院議員(立憲民主党)>

■ 大企業があまり「パートナーシップ構築宣言」をしていない状況ですが、例えば経団連といえば超大企業であり、地方の発注者側が経団連に入っていないところの方が多いのではないかと思います。経団連に所属していない地域の大きな会社への周知に、もう少し力を入れていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

 

<萩生田経済産業大臣>

■ いずれにしましても、地域の商工会議所や商工会にも協力いただくべきだと思います。また、企業が所在する地方自治体にも、この問題意識を一緒に持ってもらう必要があると思います。従って、重層的に、国民の皆さんにも認知いただくことが大事です。このように国会で質疑していただくことも大変ありがたいことだと思います。

■ 「パートナーシップ構築宣言」の趣旨を実現するには、下請企業を多く抱える大企業に宣言いただくことが、非常に効果があると思っています。例えば、近藤先生の地元・石川県とはあまり関係ないと思われる大企業でも、実はサプライチェーン全体で考えると、その大企業がつくった製品の中には、石川県の中小企業の部品が使われてことも必ずあるはずです。まずは大企業に宣言いただければ、その下請けや孫請けにも伝わっていくと思いますので、この点で重要だと思います。こうした問題意識のもと、私も経団連に「漏れなく宣言してほしい」とお願いしていまして、少しずつ宣言企業が増えつつあると報告を受けています。

■ 他方でまだ宣言に至ってない大企業も相当数いますので、引き続き宣言する企業が増えていくことをしっかり見守っていきたいと思います。政府としては各業界に対する「パートナーシップ構築宣言」に係る働きかけを強化していくとともに、「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」において、この宣言を位置付けるほか、補助金における加点措置の拡大によるインセンティブの拡充などにより、大企業の宣言数の拡大を図っていきたいと思います。例えば地方自治体とも連携して、何か公共入札のときに総合評価の中で、宣言している企業は加点があるとか、そういったこともやがて出てくると思います。じわじわと、そうは言ってもゆっくりやっていられませんので、しっかり加速度を増して拡げていきたいと思います。

 

<近藤和也衆議院議員(立憲民主党)>

■ 私も経営者と話していますと、「宣言していない」「宣言を知らなかった」という人から、「どこどこの企業は宣言しているか」と聞かれます。ホームページを探してみると「宣言していないようです」といったやり取りを何回かしました。やはり一番の大もとである企業が宣言していると、大変宣言しやすくなるのではないかと思います。加えて、世の中に知ってもらうため、この企業は「パートナーシップ構築宣言している、しっかりした会社だ」ということを見てもらうことも大切です。現在は検索に結構苦労しています。上からも下からも伝えていただくのが、一番良いと思います。双方向が大変重要だと思います。

 

 

<参考:パートナーシップ構築宣言について>

(1)概要紹介(パートナーシップ構築宣言とは?)

 https://archive.jcci.or.jp/partnership/

(2)情報サイト(掲載記事一覧)

 https://archive.jcci.or.jp/sme/partnership/