【最新海外事情レポート】 公開ビッグデータの信用情報活用を(北京)
3月5日に開幕した第12期全国人民代表大会(全人代。国会)第5回会議において、李克強総理は「政府活動報告」の中で、2017年の経済成長目標を昨年実績の6.7%からさらに引き下げ6.5%前後にすると表明した。メディアの反応が気になったが、‟実態に即した現実的な目標を設定し、経済の安定運営を優先した”との冷静な報道ぶりが多かったように思う。わずかな数字の動きを話題にしていた近年の状況から見れば落ち着いたものだ。
ところで、そうは言っても中国でビジネスをするのは難しい。法令や規則、運用が急に変わる。気付かないうちに変わっていることもある。税金関連なら何年も遡って新税率(多くは上昇)が適用され、滞納金や下手をすると罰金まで払わざるを得ない状況に直面したりもする。当商会では会員への情報提供・共有のほかに「白書」を通じた意見具申を行うなどしているが、追いつかない現実もある。
また、中国進出の外国企業(香港、台湾は除く)について言えば、日本企業は数が多く根付いているようにも見えるのに、まだまだ労務上の問題に悩む企業が少なくない。企業側が中国の文化・社会の特質を理解することが重要なことは論を待たないが、ナショナルスタッフ(現地社員)にも逆に日本の特性を理解してもらうよう積極的に意思疎通を図るべきだ。どちらか一方だけに合わせる必要はない。目標と手段を社内で共有すること、これは日本で普通に実践すべきとされていることであろう、何も特別なことではない。
社内の情報と人材を固めたら、次は外、商売相手が気になるところだ。民間の信用調査会社や銀行などから情報を集めるのが一般的だろうが、最近中国では、なかなか優れものの情報ソースが生まれてきている。中国政府が構築に力を入れている巨大なビッグデータだ。中国にいると、何でもかんでも情報を取られて一元管理されていくという一種の‟空恐ろしさ”を感じる場合もあるが、一方で、それを活用する側に立てば、かなりの量の信用情報を得られビジネスに生かせるというわけだ。
「信用中国」、「中国税関企業輸出入信用情報公開プラットフォーム」などが既にネットで公開されている。
信用情報プラットフォーム「信用中国」http://www.creditchina.gov.cn/
企業の税関信用等級や行政処罰の状況を閲覧できる「税関信用情報プラットフォーム」
日系企業を含め優良可の評価が出ている。何と言ってもブラックリスト掲載の多さに驚く。今後情報量が充実してくれば、商売相手見極めに大いに役立つだろう。
「老頼(ラオライ)」。中国で、借金を踏み倒す者を指す。代金を払わない企業なども含む概念だ。もとより企業は商売の主体である以上、債権回収ができなければ話にならない。近年悪質な老頼が跋扈(ばっこ=のさばり、はびこること)しているようで、しびれを切らした政府が全国の裁判所の情報を集めて2013年に「信用喪失被執行人データバンク」を開設した。いわば‟老頼ブラックリスト”だ。既に700万人近い登録があるとの報道も見られる。
今後、膨大なビッグデータを基礎とする信用情報が企業の強い味方になりそうだ。
(中国日本商会 事務局長 五十嵐 克也)