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【最新海外事情レポート】観光促進と不法就労者阻止に揺れるインドネシア(ジャカルタ)

インドネシア政府は、観光客数の増加を目指して、20156月から順次ビザ免除の対象国を拡大し、現在日本を含む169カ国・地域にまで及んでいる。

 

観光省は2016年の外国人観光客目標1,200万人から、2020年までに年間2,000万人に拡大する方針を示しているが、一方で労働省、法務人権省は不法就労者の増加に頭を悩ましている。

 

2016年末、ネット上で「インドネシアにいる中国人の不法就労者が1,000万人に上っている」との反中国感情をあおる噂が流れ、政府も火消しに追われた。ビザ免除の副作用として外国人の流入がテロや不法就労、密輸や不法行為を誘発するのではないかとの懸念も政府内で見られ、閣僚の一部からは同政策の見直しを求める声も上がっている。

 

このような背景もあり、昨年夏には各地域レベルで外国人監視チームが新たに結成された。年初にも外国人監視の動きをさらに強化していく意向との報道がされている。特に、ジャカルタ首都圏で日系工場の集積する西ジャワ州では、100の外国人監視チーム(TIMPORA)が結成され、工業団地への訪問査察だけでなく、夜中に駐在員のアパートを訪問して就労許可や在留許可、パスポートなどを念入りにチェックする事例も見られる。中には微細な書類上の齟齬を理由にパスポートを取り上げ、現場の担当官が悪質な金銭要求をする事例も耳にしている。

 

インドネシアは労働人口12千万人のうちの外国人労働者比率は0.06%と非常に小さい(シンガポールは40%、マレーシアは15%、タイは5%)。しかしながら、インフォーマルセクター人口(開発途上国にみられる経済活動において公式に記録されない経済部門)が多いインドネシアでは、外国人就労者が増えることに忌避感が強い。

 

インドネシアの入国管理・外国人労働者政策は、規制緩和の方向に向かったり、管理強化に振れたりと波があるが、本年は観光促進を目的としたビザ免除で外国人流入が増えることを背景に外国人労働者については管理強化のトレンドとなるのではないかと思われる。特に工業団地では、設備の据え付けや機械の補修など短期で工場に入る技術者、設備の営業担当者、監査担当者など工場に入る外国人が当局の査察に遭遇する例があるので、外国人には適切なビザ・就労許可を備えるなど事前の準備を慎重にすることが求められる。

 

ジャカルタ・ジャパン・クラブ 事務局長 吉田 晋