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【海外最新事情レポート】コロナ後を見据え、カンボジア政府が仕込む"策" (カンボジア)

  カンボジアでは9月、車のアッセンブリーを行う企業の進出が2件報道された。これまでもカンボジアには自動車部品等、世界的なサプライチェーンの一部を担う企業が進出しており、事業を拡大しているが、完成車の組み立てを行う企業の進出は今回が初めてとなる。現在はコロナ禍であるものの、次第に明るいニュースが聞こえてきているように思う。

 

 そこで、今回はカンボジア政府が今後の成長戦略の一環として掲げている政策についていくつか紹介する。

 

●新投資法

 新投資法は、9月30日現在、近日中に施行が予定されている法律で、現行の1994年法および2003年改正法で定められていた投資法が改正される。同法は、在カンボジアの各国商工会議所でも注目されており、カンボジアへの投資誘致拡大を視野に、カンボジア経済の主軸として期待する分野・業種や、税制優遇の適用範囲および選択肢の拡大、投資家や投資資産の保護などが明記される予定となっている。

 優遇措置が適用される分野は、世界のサプライチェーンに貢献する産業、農業・食品加工業、デジタル、健康分野など、合計18分野・業種ある。それ以外に政府が社会経済的発展のための可能性があると判断する分野も含むこととしている。企業はプロジェクト(事業)ごとに政府に事業登録を行い、登録証明書の発行をもって同法に記載の資産等の保護や、事業所得税・前払税・ミニマム税などの免税措置が適用される予定になっている。

 

●国内の調達を促す商品データベースを構築(SD2)

 2020年度ジェトロ日系企業実態調査によると、カンボジアの現地調達率が約5%と、ASEAN域内で最も低い割合となっている。カンボジア政府としては、国内で調達ができる商品を見える化し、国内調達が可能な商品のデータベースを作り、Supplier Database with Sustainability Dimensions(SD2)利用を促進する考えである。

 

●企業内で人材育成にかかる費用の助成(SDF)

 カンボジアでは、これまで進出企業の間で人材育成が課題としてあげられることが多くあった。政府も同様に課題を認識しており、この度、民間企業で行われるカンボジア人従業員等に対する人材育成にかかった費用の最大半額を政府が助成する「能力開発基金(Skills Development Fund:SDF)」を開始している。

 

 このほかにも国有地の有効活用を促進するための策を検討するなど、カンボジア政府はコロナ後を見据え、企業誘致を歓迎する姿勢を見せており、積極的に策を講じている。コロナ終息後の発展が加速することに期待したいところだ。

 

カンボジアンの風景.png

▲カンボジアの街並み

 

(カンボジア日本人商工会 事務局長 兼 ジェトロプノンペン事務所所長 春田 麻里沙)