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【最新海外事情レポート】豪州のコロナ対策とシドニー日本商工会議所の役割について(シドニー)

 依然として収束の目途が立たない新型コロナウイルス(以下、コロナ)については、当地、オーストラリア(以下、豪州)においても未だに大きな影響を及ぼしている。

 豪州政府は、コロナ対策をいち早く講じ、昨年3月20日より全ての外国人の入国を原則禁止にしている。また、海外からの入国者には14日間の隔離を義務付け、水際対策を徹底してきた。私自身も昨年8月に豪州入りした際、市内のホテルで14日間の隔離を経験した身である。

 迅速な対応を講じたことで、豪州でのコロナ感染者は他国と比較して低位で推移している。私自身、日本と豪州の二国間でコロナ対策を経験したこともあり、豪州でのコロナ対策を紹介するとともに、コロナ禍におけるシドニー日本商工会議所の役割をご紹介したい。

 

【豪州政府のコロナ対策】

 まず、豪州でのコロナ対策であるが、上述のとおり、各国に先駆けて入国制限を敷く等、初動が早かったと評価できる。日本では、入管法に基づく入国制限対象地域を適宜拡大していったことと比較すると、豪州の対応がいかに迅速であったかが窺える。

 ただし、いち早く入国制限を敷いた豪州であっても、国内での封じ込めには苦慮を強いられてきた。感染が落ち着き始めたと思われた昨年6月、ビクトリア(VIC)州のメルボルンで大規模なクラスターが発生し、7月から11月までロックダウンが実施されたほか、当所が立地するニューサウスウェールズ(NSW)州シドニーにおいても、クリスマス目前の昨年12月にクラスターが発生し、一部地域でロックダウンとなった。 

※1月30日から西オーストラリア(WA)州のパースでもロックダウンとなった。

 ここで注目すべき点としては、クラスターが発生したとしても、感染者の発生から封じ込めまで、迅速かつ徹底しているということである。シドニーの対応を例にとると、常に感染経路を捉える仕組みを構築している点が注目できる。例えば、市内の飲食店には入店の際、個人情報を入力する仕組みとなっており、入店者の情報が即座にNSW州政府に登録される。感染者が発生した場合、利用した施設、公共交通機関、飲食店等が即座に公開され、当該施設を利用した者には、PCR検査が義務・推奨される。感染者の数によっては、上述のようにロックダウンまで実施される。このような対応により、シドニー、メルボルンと二大都市でのクラスター発生にも関わらず、他国に比較して少ない感染者で推移できているものと考える。

 日本では、政府による移動の制限は実施できないことから、国民自身の配慮が求められているが、この政府による規制の有無が日本と豪州の大きな違いだと思われる。

 

 IMG-4145.JPG

(飲食店に設置されている州政府のQRコード)

 

IMG-4172.PNG(入力情報はスマートフォンのAPPと連動される)

 

【シドニー日本商工会議所の役割】

 一方、感染の封じ込めのみをコロナ対策として評価することは適当ではなく、対の面として上げられる項目は、日本と同じく経済面である。豪州は、先進国では極めて稀な28年間にも及ぶ経済成長を続けていたが、昨年はコロナの影響により、2四半期連続のマイナス成長、景気後退となった。現在は、第3四半期の実質GDP成長率が前期比3.3%までに回復したが、前年同期比ではマイナス3.8%にとどまっており、今後も政策による景気支援が必要と考えられる。

 

(豪州の実質GDP成長率) 

 

 このような中、シドニー日本商工会議所としては、メルボルン・パース・ブリスベン・ゴールドコーストの5つの日本商工会議所で構成する全豪日本商工会議所連合会として要望事項を取りまとめ、在豪州日本大使館、在豪州各公館へ意見書を提出し、コロナ禍における会員企業の課題解決を図ったところである。また、在シドニー日本総領事館やJETROシドニー事務所等とは、逐次意見交換を行い、共同でのセミナー開催等、日系企業の支援に向け対応を講じている。

  

【コロナ禍で重要なこと】

 コロナについては、未知数な部分が多く、また、最近では変異種が発見される等、不明な点が多々存在する。各国では、何とか感染が拡大しないよう必死に対策を講じている状態である。正に暗中模索であるが、コロナ禍で重要なことは、「できることから対応を講じていく」ことだと考える。月並みな表現であるが、実際に実践することが非常に重要であると思う。このことを商工会議所の業務に当てはめて考えると、例えば、諸会議やセミナーはオンラインでも実施可能であり、工夫次第では、対応を講ずることは可能であることが分かった。当然オンラインでは全て代替はできないが、課題を一つ一つ乗り越えていく際、非常に重要なツールである。また、イベント等の実施については、未だ開催が難しい状況であるが、規模を縮小し、配信型に切り替えるなど対応策に余地はあると考える。

 いずれにしても、コロナ禍において「正解」を導き出すことは非常に難しく、まずはできる対応を講じ、その上で課題があれば修正し、動きを止めないことが最も重要であると考える。シドニー日本商工会議所としても、日系企業の支援に向けて活動を継続していく。

(シドニー日本商工会議所 事務局長 千葉 雅崇)