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【最新海外事情レポート】 漢字圏としてのベトナム(ハノイ)

ASEANの一員であり、現在はアルファベットをもとにした文字を国語に用いていることから、漢字とベトナムの関係に気づく日本人は必ずしも多くない。しかし、古くからの多様な交流を通じて中国の影響を大きく受けた結果、ベトナム語には、漢字を語源とした漢越語と呼ばれる種類の単語が多数ある。表1は、そうした単語の一部をまとめたものである。

 


 

一読いただくと、カタカナによって示したベトナム語の発音と、対応する漢字の日本語の読み方が似通っているものが多いことにお気づきではないか。こうした、漢字に語源を有する単語は、ベトナム語の単語全体の約7割を占める。

 

1では漢字2文字または3文字の単語を紹介したが、日本語に漢字の音読み・訓読みがあるように、ベトナムにおいても漢字の一つひとつに対応した、いわば「漢字のベトナム語読み」がある。表2は、そうした「漢字のベトナム語読み」のうち、日本語の読み方に近い一例を紹介している。

 


 

中国語と同様に、ベトナム語にも声調と呼ばれる音の抑揚が母音にあるため、カタカナでは一様に「キー」と表した発音も、「kỳ」「ký」「kỷ」は正確にはすべて異なる発音となる。しかしながら、「期」「奇」「記」「寄」「紀」と、いずれも音読みで「き」と発音する日本語の漢字を念頭に置きながらこれらの文字を眺めると、日本と同様の漢字圏にベトナムが位置していることが理解しやすいのではないか。

 

3は、日本でも馴染みがある中国語の固有名詞について、ベトナム語の読み方を記したものである。


 

英語をはじめ、世界中の多くの言語ではこれらの固有名詞を表現する際、例えば中国の最高指導者をXi Jinping(シージンピン)と表現するように、中国語の発音の表記をそのまま用いる場合が多い。それに対し、ベトナム語では、漢字の一文字ずつに当てられた独自の漢字の読み方を用いて、中国語の固有名詞を表現するため、「習近平」は「タップ カン ビン」、「北京」は「バック キン」となる。さらに、日本語においても「シャンハイ」と中国語に近い発音を採用する「上海」もそれぞれの漢字の独自の読み方を忠実に当てはめ「トゥオン ハイ」とベトナム語は表現してしまう。

 

いかがだろう、これまで「独自の漢字の読み方」という観点からベトナム語の特徴を解説してきたが、同じく独自の漢字の読み方を有する日本語を用いられる皆さまが本論を通じ、ベトナム語への興味をほんの少しでも持っていただければ幸いである。

 

ベトナム日本商工会 事務局長 安藤 憲吾)